

Mr.Friendly(営業担当):
博士、新しい運転手さんに先日教えてもらった「8×5」の話をした時に、現場の人が「あと さんぼーる 足りな~い!急いで作らなきゃ~!!」ってつぶやきながら早歩きで通っていったのですが…。
佃煮博士:
ふむふむ。
まず最初に大事なのは「現場で走ってはいかん!」ということじゃな。“急がなきゃ”と思った瞬間に周りが見えなくなるのが現場というものじゃ。荷物を持っていたり、まわりに車や台車がある環境で走るのは、ほんの数秒でも危険度が跳ね上がる。
早歩きだとしても危険は危険じゃ。
あせっているとミスをしたり、思わぬ事故につながってしまう。もしそういう人を見かけたら注意せねばならん。
Mr.Friendly:
それはそうなんですが…。
運転手さんが気になったのは「さんぼーる」の方だそうです。
佃煮博士:
ムムム…、ってそっちかい。
……………コホン。
安全の話は大事じゃが、さて「さんぼーる」の話に戻ろうかの…。
ウチの会社では箱の数を数えるときは「箱」や「ケース」ではなく「B(ボール)」という呼び方を使っておる。
なじみのない呼び方じゃが、意味は「箱」や「ケース」と同じじゃ。「さんぼーる」は「3B(さん・ボール)」、つまり3箱ということじゃ。
Mr.Friendly:
そういえば現場でたまに聞きますね、「B(ボール)」という呼び方。
佃煮博士:
例えば、5合3甲(ご・あい・さん・こおり)の佃煮の発注がきた場合、全部で 5合 × 3甲 = 15B(じゅうご・ボール)必要じゃ。
在庫が12B(じゅうに・ボール)しかなくて3B(さん・ボール)足りない時にさっきのセリフがでそうじゃな。
Mr.Friendly:
なるほど…。
原料や資材を探していたんでしょうね…。
あれ、でもなんで「B(ボール)」という呼び方を使ってるんですか。
佃煮博士:
ははは、今となってはわしにもわからん。
「B(ボール)」という呼び方がボール箱や段ボールの「ボール」から来ているのか、物流業界で使われる単位「ピース」「ボール」「ケース」の「ボール」から来ているのか、あるいはPPバンドで括られる箱を「ボール」と呼ぶ慣習があるのか…。
昨今では、スーパーや量販店での呼び方に合わせて「ボール」ではなく「ケース」という呼び方が全国的に主流になっておるんじゃが、うちの現場では「B(ボール)」という呼び方がすっかり根付いておる。長年の慣習で、深く考えずに「箱=B(ボール)」として使っておるから、今さら別の呼び方に変えるのも難しいんじゃ。
それに、符号や単位は「現場で素早く伝わること」が一番大事じゃ。「3B(さん・ボール)足りない!」と言えば、誰もが瞬時に「3箱追加せねば!」と理解できる。
こうして符号や略語は、まるで方言のように現場に定着していくんじゃよ。
Mr.Friendly:
なるほど…。
つまり「B(ボール)」は由来がどうであれ、現場で共通言語として便利だから残っているわけですね。
佃煮博士:
そういうことじゃ。
物流や製造の現場では、こうした“現場言語”がたくさんある。
以前説明した「甲」「合」などはその代表例じゃな。
新しい人には最初は暗号のように見えるが、慣れると一瞬で数量や状況が把握できる。だからこそ、君のように丁寧に説明してあげる人がいると、新しい人も安心して現場に馴染めるんじゃよ。
Mr.Friendly:
博士、ありがとうございます。
これで運転手さんにも胸を張って説明できます。
佃煮博士:
うむうむ。よい心がけじゃ。
現場の知恵は、こうして次の世代に伝えていくものじゃからな。
事務員のぼそっと:
……その説明、私も新人の時に欲しかったです。
